横浜弁護士会新聞

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2001年10月号(2)

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論壇 柔軟な紛争解決方法の模索
二弁夏期合宿・全国仲裁センター連絡協議会から
あっせん・仲裁センター運営委員会 委員長 庄司 道弘
一 司法改革審議会の提案の一つとして、弁護士会が運営するあっせん・仲裁センター等所謂ADR(裁判外紛争解決機関)に対し、債務名義を取得する機能を付与すると、時効中断効を付与することなどの検討が挙げられている。
 こうした動きの中で毎年当会あっせん仲裁センターが参加している東京第二弁護士会仲裁センター主催の夏季合宿(以下二弁夏季合宿という)のこれまでの様子、及び今回が第五回目となる大阪弁護士会会館において開催された第五回全国仲裁センター連絡協議会の開催の模様をお伝えする。
二 (1)二弁夏季合宿は、最初に仲裁センターを作った二弁が中心となって毎年全国から主だった仲裁センター(現在一三弁護士会)、裁判官、学者、消費者グループなどが集まって開催され、当会も既に五回出席してこの研究討議に参加している。
 ここでは、毎年各弁護士会の現在の仲裁センターの状況が報告され、又当面している諸問題について討議される。この討議の中で面白いのは裁判という硬直した紛争解決方式が直面している様々な問題を自主的に解決する糸口を真剣になって模索している姿がみられることである。
 (2)少年問題を扱っている裁判官は、加害者と接点のない被害者とその家族がどのようにしたら納得のできる解決ができるのか、これを何とか仲裁方式の中で解決できないかという問いかけを発する。
 (3)また、岡山県弁護士会の仲裁センターからは、現在の離婚訴訟がないがしろにしている心のケアの問題を正面から取り上げて、採用しているカウンセラーの活躍によりすばらしい解決をしている例が報告されたりする。
 (4)また、広島の仲裁センター全国連絡協議会の際には、仲裁における進行方法として、ニューヨークで仲裁員として活躍しているレビンさんを呼んで、話合いは対席方式でなされるべきか交互方式でなされるべきかということが取り上げられた。この点は、引続いて今ホットな話題となっている。
 また、質問方法についてクローズドクエスチョンか、オープンエンドクエスチョンかという方法について討議され、能率ということをつい優先させがちな我々の意識に新風を吹込んでくれる。
 (5)これらの取組みは当事者の紛争の自主的解決にどうしたら資することが出来るのか。当事者が質問の本質を明らかにし、当事者が問題の解決する基準を自ら発見するにはどうしたらよいのかという発想に支えられているのである。
三 こうした発想を根底に秘めながらも、他方、第五回大阪協議会では現在の技術的専門的な紛争をどの様に扱うべきか、専門家との自由闊達な提携を弁護士は進んで切り開く努力を進めるべきではないかという視点のもとに関西学院大学高橋裕教授の報告がなされ、建築紛争、医療過誤紛争、その他専門紛争について専門家との提携方法と取組み方法が提案された。
 さらに大阪公害審査会、大阪建設工事審査会、消費生活苦情審査会など行政が主催するADRの状況が報告され、問題点が討議された。
四 当会のあっせん仲裁センターの事件取扱い数は残念ながら毎年30件足らずで当初の目標以上の限界をなかなか超えない。しかし当会の解決率の点で見れば全国トップクラスを誇る。解決事例を見ると、損害賠償請求などの外にも、「相当額の更新料を定める」旨の申立て、「借地や底地の買取を求める」申立など、紛争の多様性を反映した柔軟な知恵が要求される事実が見て取れるのである。
 こうした傑作解決事例報告は今後ともみなさんに紹介してゆきたいと思っている。

新庁舎探検記
随所に遺る旧庁舎のおもかげ
 完成から一カ月余りたった八月末、横浜地方・簡易裁判所新庁舎を探検した。
* * * * *
 新庁舎の最大の特色は、低層棟外観に旧庁舎が再現されているほか、至るところに旧庁舎をイメージしたデザインが取り入れられていることである。
ステンドグラス
 日本大通り側エントランスは、外壁のスクラッチタイル、アーチ型の車寄せや天井、扉など、旧庁舎をそのまま残したかのようだ。
 守衛室にはめ込まれたステンドグラスは旧庁舎の物がそのまま使われている。来庁者の中には「旧庁舎を壊していないんですか」と尋ねる人がいるというのも頷ける。
波とかもめ
 エントランスを抜けると、旧庁舎時代の重厚だが暗い正面階段の代わりに、四階まで吹き抜けの明るいホールに続く。待ち合わせコーナーが広くとられており、置かれている椅子も、いかにも裁判所という感じのベンチではなく、衝立と背もたれのあるタイプで、ゆったりと座れ、プライバシーも確保できる。裁判見学に訪れた人からも「これまでの裁判所のイメージと違う」「ゆっくり傍聴計画が立てられる」と好評とのこと。照明も、壁掛けタイプは波を、ポールタイプはカモメをモチーフにし、横浜らしさを醸し出している。
旧特号法廷の扉
 中央ホールの目を引く壁飾りは、旧特号法廷の扉上の飾りから鋳型をとって作ったものとのこと。その下には旧庁舎の基礎に使われていた花崗岩が配されている。
 みなと大通り側エントランスや高層棟は、一変して現代的なデザインだが、こちらにもさりげなく旧庁舎のモチーフが使われている。旧特号法廷の扉に用いられていた円形の意匠は、案内板のベースデザインに使われているほか、ほとんど誰も気付きそうにないが玄関のガラスにも使われている(腰くらいの高さのところをよーく見ていただきたい)。

 歴史的・景観的価値が評価され、横浜税関や、ホテルニューグランドと並んで、横浜市から歴史的建造物の認定を受けている。

バリアフリー
 旧庁舎の歴史的価値を継承しつつも、近代的機能も当然備えている。法廷や各種手続室の充実ぶりは既に前月号で紹介されているが、特筆すべきは庁内の随所でバリアフリーへの配慮がなされている点であろう。エレベーターやトイレはもちろん、みなと大通り側案内カウンターや簡裁受付カウンターは、車椅子利用者が応対者と対面しやすいような形を採用するなどの工夫がみられる。
 弁護士待合室は、位置が法廷等からやや遠いのが難点だが、比較的広く、レイアウトも建替問題対策委員会の要望に添ったものになっている。依頼者との打ち合わせスペースが三つ設けてあり、使いやすそう。あまり知られていないせいか、取材当日は利用者がなかったのがもったいなく感じられた。
* * * * *
 床面積・部屋数が飛躍的に増えたこともあって、あちこちに設置された案内板にもかかわらず、まだ迷ってしまうことが多く、いくらかよそよそしさを感じていた新庁舎だが、今回の取材で細部まで見て回るうち、愛着が感じられてきた。
(探検者 栗田 誠之 小沢 弘子)

事務員研修「民事再生・個人再生手続」
栗田法律事務所事務員 小倉由紀子
 八月一日、若田順弁護士を講師に、「民事再生手続・個人再生手続」の事務員研修会が弁護士会館五階大会議室で行なわれました。
 民事再生手続は昨年四月から、個人再生手続については今年四月から施行されたばかりということもあって、当日、多くの事務員が参加し、この新しく施行された制度に対する関心の高さが感じられました。
 当日配布されたレジュメには、制度の趣旨や手続の流れが要点をまとめて書かれており、資料として申立書も用意され、それに沿った説明も事務員レベルの視点に立った大変分かりやすいものでした。
 債務者が、どの手続きをとることが適当であるかや個人再生手続をとることの利点などの説明の他、債権者一覧表の提出は義務的であり、つけないと却下事由とされていることや、訂正や追完は原則的に出来ないので金額や住所等はしっかりチェックし、ミスはないようにすることなどの事務的な注意事項が、その説明に盛り込まれていました。
 このような手続きに関しては、事務員が直接的に関わる事が多く、概論を知っておかなければ、事務は円滑に進行しないと思われます。
 今回の事務員研修は、新人からベテランの事務員まで、有意義な研修会でした。
 私は、今まで何度か事務員研修会に参加させて頂いておりますが、その中でも今回の研修会は、大変充実した内容の研修会でした。
 今後の研修会も、今回の研修会のようなものであることを期待したいと思います。


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