横浜弁護士会新聞

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2001年1月号(2)

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一番印象に残っていることは国籍条項の一部を撤廃したこと
 全国の都道府県並びに政令指定都市等の自治体には、地方人事行政の民主的かつ能率的な運営を行うために、人事委員会が設置されている。
 今回は、横浜市の人事委員会委員長、全国人事委員会連合会の副会長の要職にある大谷喜與士会員に委員会の活動内容や印象などを伺った。
・委員としての経歴を教えてください
 平成六年七月一日に委員に就任し、平成一二年六月一日付で委員長の職に任ぜられました。全国人事委員会連合会の副会長は、横浜市人事委員会の委員長が就任することになっています。
・人事委員会の活動内容を教えてください
 主なものは三つあります。一つ目は、民間の給与調査を行い、これを参考に公務員の給与の勧告書を出すこと、二つ目は、職員の採用や昇進試験に関する業務、三つ目は、処分や不服申立の審査や判定を行うことです。
 これらはいわば行政的権限や準司法的権限ともいうべき業務ですが、そのほかにも人事委員会規則を制定するという立法的権限ももっています。
・委員会の構成メンバーはどうなっているのですか
 横浜市では、行政のOBが一名、経済界出身者が一名、それに弁護士一名の計三名です。弁護士が委員に加わっているのは、その公平性、専門性が委員会の業務に不可欠だからだと思います。とりわけ準司法的業務を行う際には弁護士の発言というのは大きな意味を持ちます。
・委員会の意思決定はどのように行うのですか
 委員三人の合議で行います。規則上は多数決でも良いのですが、これまでは全て全員一致で決定を行っています。この三人というのは定員であるとともに定足数でもあるので一人でも休むと委員会が成立しません。そのおかげで風邪を引いても休めないし、委員会は毎週一回開催されますので、まとまった休みが取れないのが悩みの種です(笑)。
・印象に残っていることは何ですか
 一番印象に残っているのは、横浜市の職員となる為には日本国籍が必要であるという国籍条項を一部撤廃し、公権力の行使と公の意思形成に参画する業務以外の業務について、外国籍の人に門戸を開いたことです。そのときは憲法学者などを呼んでいろいろと勉強をしました。
 最近では、厳しい経済情勢を反映して二年連続で前年度の年収を下回るという給与勧告を出したことが特に印象に残っています。
・最後に、今後弁護士の数も増え、弁護士が行政に関わる機会も増えていくと思われますが、後輩の弁護士にアドバイスをお願いします
 機会があれば積極的に行政に参加して、どんどん発言して欲しいと思います。弁護士の意見は他人から重く見られますから責任も重いのですが、行政に関わることで大変勉強になりますし、やりがいのある仕事です。
(インタビュアー 岩田武司) 


 平成一二年一一月八日、横浜市西区の紅葉坂会館において、神奈川県警、神奈川県暴力追放推進センターと横浜弁護士会民暴委員会の三者による「民暴研究会」が開催された。これまでも神奈川県では三者による協議会を毎年一回程度行ってきたが、本年警察庁から各県警に対し、各県弁護士会の民暴委員会との間で「研究会」の名称で定期的に会議を開き、意見交換をするようにとの通達が出されたこともあり、神奈川県でも「民暴研究会」の名称で会を持ったものである。
 今回の研究会には横浜弁護士会から一四名の委員、県警等から横山刑事部長を始め一二名が出席する盛会であった。これまで県警からは暴対課のみが出席していたが、今回からは暴対課に加えて、暴力団事案に関係を有する捜査四課、捜査二課、生活経済課の担当者が出席し、最近取り扱った各種事例について報告がなされ、また弁護士会側からは最近川崎で起きた発砲事件を巡る立退請求の事案等について報告がなされた。なお、この事案は一昨年県警、暴追センター、弁護士会の間で締結された三者協定にもとづき三者による事案処理チームで現在処理されているものである。また最近執行妨害の事例が多いことから、裁判所から執行官にも出席して報告していただいた。
 暴力団排除を目的に今後も定期的に「研究会」を続けていく予定であるが、単なる報告だけでなく、名前のとおりテーマを決めての研究を行える形にしていきたいと願っている。
(民暴委員会委員長 ) 


 平成一二年一一月八日及び九日の両日、当会館において第一二回倫理研修会が開催された。
 倫理研修は五年ごとに参加が義務づけられており、今回の対象者は一四一名、出席者は一一一名であった。
 私は弁護士登録後満五年の対象者であり、常議員だったこともあって、よりによってパネリストを委嘱され、一一月八日の研修会に参加した。
 最初に松浦光明副会長から綱紀・懲戒事件及び苦情処理についての報告があり、その後、事前に配布された課題文の各設問ごとにパネリストによる発言、会場からの発言、川島清嘉研修委員長の所見という順序で進行した。
 課題文の設問は三問あり、第一問は弁護士倫理二四条の依頼の目的が不当な事件に関するもの、第二問は刑事事件における証拠物の保管等に関するもの、第三問は弁護士倫理五一条の利益供与に関するものであった。
 一一月八日のパネリストは第一問が小野毅会員、第二問が私、第三問が大島正寿会員である。しかし、パネリストには、研修委員会から「議論の呼び水になるような見解を」という解釈の難しいアドバイスがあっただけであった。
 大島会員は淡々と発言していたが、小野会員は、素直に「議論の呼び水」になるような議論喚起につながる発言をしたところ、参加者から次々と質問を受けるはめになり、「話が違うじゃないか」と言いたそうであった。
 私としては、赤っ恥を覚悟して自分の考えを話すほかなかったが、第二問の中には、弁護人が保管している証拠物を警察官が令状を持って差押に来たときどう対応するか、という設問があって、これが一番迷った。押収拒否権がある以上、差押を拒むべきなんだろうと思ったが、果たして自分がそうなった場合、拒否できるか自信がなかったからである。
 しかし、第二問については、会場から岡田尚会員の経験に基づく詳しい解説があり、私の話などよりはるかに参加者の役に立ったに違いない。
(会員  浦田 修志) 


 司法修習生の時に、家庭裁判所で少年部修習もやった、少年事件の講義も数多く聴いた、少年院や少年鑑別所にも行った、仏教慈徳学園にも行った。司法修習を終えて弁護士になって何を今さら少年事件の講義を受ける必要があるのか。このように考えていた私が大バカだった。忙しかったので欠席しようと思ったことも一瞬あったが、今回の講義を聴いて本当によかったと思っている。
 まず、講師の先生(高橋温会員)が、少年事件を数多く手がけている若手の弁護士という点がよかったと思う。少年事件は若手の弁護士が頑張らなければならない分野だと思うので、若手の先生が講師だったことは私のイメージに合っていた。
 次に、弁護士になってから聴く講義と司法修習生の時に聴く講義とでは、講義を聴く私たちの真剣さが違った。司法修習生時代と違い、今は、明日少年事件を受任してもおかしくないという日々である。司法修習生時代は講義でよく居眠りしていた私の同僚も真剣な眼差しで講義を聴いていた。彼は既に少年事件を受任しているようで、講義を聴いた後、「まだまだ自分のやり方が甘いということに気づいた」と述べていた。私たちにとって講義がいかに有意義であったかを物語るエピソードであろう。
 私は、まだ少年事件を受任したことはないが、今回の講義を聴いて、講師の先生の熱意が伝わってきて、少年事件を早く扱ってみたいという気になった。いつか私が少年事件を受任した日には、きっと今回の講義が生きるに違いない。
(53期 苑田 浩之) 


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