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イベント情報(2023年度)

憲法問題シンポジウム「憲法9条の現在と立憲主義」を開催します。

2023年05月29日更新

開催結果報告

  • 参加人数:約200名

7月10日、当会会館にて、シンポジウム『憲法9条の現在と立憲主義』が開催された。講師は、国民的知名度を誇る憲法学の権威、長谷部恭男教授(東大名誉教授・早稲田大学法学学術院・大学院法務研究科教授)である。当会では、本年3月の臨時総会において、「『反撃能力』の保有に反対し、日本国憲法の理念に立脚した国際平和の実現を目指す決議」が採択されており、本講演会は同決議の原案を立案した憲法問題対策本部が企画した。昨今の政府の動向、すなわち、敵基地攻撃能力(反撃能力)保有と集団的自衛権容認に警鐘を鳴らすとともに、そもそも憲法9条や立憲主義が何であるのかというところから考えたい、そのような思いで、憲法学の長谷部教授にご登壇いただいた。
   シンポジウムでは、まず、島崎友樹会長より開会の挨拶として、当会の問題意識と会長自身の思いが語られた。
   次いで、憲法問題対策本部委員の中尾繁行会員より、上記決議の紹介とその理念及び同日の企画趣旨の説明がなされた。
   長谷部教授の講演は 、憲法9条第1項「国際紛争を解決する手段としては」の文言に着目し、同項が「放棄」しているのは何であるのか、という問題提起から 、歴史的経緯に及んだ。
   従前の列強各国は 、グロチウス的戦争観(戦 争は国家間の決闘であり、裁判に代替する国際紛争解決手段。)を共通認識としていたところ、1928年パリ不戦条約によって 、 国際紛争解決を目的とした戦争・国家政策の手段としての戦争が放棄される 。9条1項の上記文言はここからくるもので、自衛権を否定する趣旨ではない。
   他方、自衛権の行使としての「武力の行使」を許容する憲法上の文言は無く、「武力行使」について憲法が設定するベースラインはゼロであるから、基本権の制約が許容される場合の思考様式と同様に、十分な理由に基づく正当化ができる場合にのみ、例外として許容され得る。
   条文の根拠がない、その間隙を判例等の有権解釈が埋め、法を補完するところ、9条については、内閣法制局による有権解釈(「我が国が直接武力攻撃を受けた場合、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される危険があるから、必要最小限度の武力を用いて対処すること=個別的自衛権行使は許容される」)がその役割を果たしてきた。
   ところが、政府は、2014年の閣議決定で、集団的自衛権行使を容認。これは、従来の政府解釈の片言隻句を転用した筋の通らないもので、論理的整合性・法的安定性ともに欠如している。この閣議決定を境に、憲法論の土台となる底が抜けてしまったと言え、現在の「反撃能力」に関する議論に、実質的な憲法論が欠如する所以となった。
   最後のトピックは「自衛隊の存在と立憲主義」である。立憲主義の二つの意味を紹介し(① 憲法によって政治権力を拘束する、②多様な価値観・世界観の公平な共存を保障する)個別的自衛権は②の立憲主義にも適うものであること、個別的自衛権のみが許容されるとの確立した有権解釈を論理的整合性・法的安定性を無視して変更したことは①の立憲主義に反することが指摘された。
   このように、長谷部教授は、集団的自衛権容認が憲法9条及び立憲主義に反し明らかに違憲であること、そして、政府が許容範囲を画す基準を破壊したことで、反撃能力保有をなし崩し的に実現しようとしている現状とを、明快に説明した。
   そして、質疑応答では、来場者から鋭い質問が多数寄せられた。時間の関係で全てを取り上げることは叶わなかったが、極力多くの問いに答えていただいた。長谷部教授は、その人柄を感じさせる笑顔とユーモアを交えつつ、全てに真正面から回答された。質疑応答を通して講演内容の理解が深まり、多くの人と共有する講演会の意義を、強く感じた。
   コロナ禍前同様の会場開催であったが、机ごとに置かれた3つの椅子が全て埋まる満席状態。来場者の表情が見える熱気に包まれた会場に、どこか懐かしさを覚えた。
   本講演会を、Zoom参加を含め200名を超える市民の方々と共有できたことは、大変大きな意義があった。
   なお、本シンポジウムは2回連続企画であり、次回は9月15日に青井未帆学習院大学教授(憲法学)の講演が予定されている。
   当会及び当会憲法問題対策本部は、今後も、安保法制、安保三文書、集団的自衛権の容認、反撃能力保有が明らかな憲法違反であることを伝え続け、政府の閣議決定で容易く憲法の枠を踏み越えることが常態となりつつある現状に警鐘を鳴らし続けるとともに、市民の皆様と問題意識を共有する企画を続けていく所存である。

写真 写真 写真

 

日  時 2023年7月10日(月) 18:30~20:30(開場 18:00)
講  師

長谷部 恭男 さん
早稲田大学法学学術院 大学院法務研究科教授

東京大学名誉教授 専門は憲法学

会  場 神奈川県弁護士会館
WEB同時配信
参加方法

【会場でのご参加】

会場参加希望の方は当日直接会場へお越しください。(事前申込不要 定員100名先着順)

【WEBでのご参加】

WEBでの参加希望の方は下記URLからお申し込み下さい。

https://us06web.zoom.us/webinar/register/WN_x9a-5VzhTGGpksRn8FSjYA#/registration

(締め切り:7月7日(金))

お申し込みいただいた方に、視聴用URLをお届けいたします。

オンラインでご参加いただくために、あらかじめパソコンやスマートフォンにZoomを設定して下さい。

参加費 無料
主  催 神奈川県弁護士会
共催(予定) 日本弁護士連合会・関東弁護士会連合会
お問い合わせ先

神奈川県弁護士会
TEL:045-211-7705 (平日9:00~12:00、13:00~17:00)
FAX:045-212-7718

 

 
 
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