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会長声明・決議・意見書(2020年度)

預託法及び特商法の改正に関する会長声明

2020年12月11日更新

消費者庁「特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会」は、本年8月19日報告書(以下、「報告書」という)において、「預託商法」被害の防止並びにホームページ等で通常より低価格・無料で購入できると大々的に広告し顧客を誘引する一方で実質は数か月の通常価格での購入が条件となっている詐欺的な「定期購入商法」及び身に覚えのない商品を送り付け後で代金を請求する「送りつけ商法」等に対応するために必要な法整備を行うことを取りまとめた。具体的には、特定商取引に関する法律(以下、「特商法」という)及び特定商品等の預託等取引契約に関する法律(以下、「預託法」という)を改正するというものである。

当会は、預託商法被害の防止について、2018年11月8日付意見書において預託商法については金融商品取引法(以下、「金商法」という)の集団投資スキームを適用するように意見を発出した。しかし、国は、預託商法に対しては預託法の見直しで対応するという方針をとったため、2020年1月23日付意見書において、預託法を改正するのであれば、金商法と同等の内容の法整備を行うべきであるとの意見を発出した。

この度、報告書は、販売をともなう預託等取引契約について、本質的に反社会的であるとの認識に基づき、改正預託法において原則禁止とする方針を示した。そして、顧客資産の受入れ及び運用等を行う場合は金商法等の法令の枠組みによるべきであるとしている。これは、実質的には当会が述べてきた意見と方向性は違わないものと位置付けられ、高く評価できる。

しかし、その場合、禁止する範囲が狭いと金商法との間に隙間が生じるし、また、原則禁止の例外の定め方によっても同じことが言える。したがって、改正預託法と金商法との関係において隙間がないように法整備を行うべきである。とくに、特定商品制を撤廃すると同時に権利についても施設利用権だけでなく権利全般を適用対象とすべきである。また、安愚楽牧場事件やジャパンライフ事件など過去の主な販売預託商法の被害だけでも合計1兆円にも及び、被害が繰り返されていることを踏まえ、違反行為をした者に対しては十分抑止力のある罰則を設けるべきである。

定期購入商法は、インターネットの画面において十分な確認をしない消費者が多いことにつけ込む詐欺的商法である。このような、インターネット通信販売による詐欺的な定期購入商法の被害防止の法改正の必要は高い。国民生活センターのホームページにおいても、令和元年12月19日付で「相談激増!『お得にお試しだけ』のつもりが『定期購入』に」という見出しのもとに注意喚起がなされている。現在のコロナ禍においては、インターネット取引が増加することが予想され、被害防止の必要性は特に高まっている。

他方、現行の特商法を含む法規制は十分ではなく、このような被害が多発する現状がある。したがって、特商法において、初回無料等の定期購入契約であるにもかかわらず、定期購入契約ではないと誤認させるような広告を禁止するとともに、広告及び申し込みの最終確認画面において契約条件を一体的に表示することを義務付けたうえ違反した場合の契約の解消などの民事効を設け、さらに解約を妨害する行為の禁止規定を設けるべきである。

送りつけ商法による被害は、とくに高齢者等の判断能力の不十分な消費者を中心に継続的に発生している。送り付け商法の商品はさまざまであるが、コロナ禍においては、マスクの送り付け商法が発生し本年4月には消費者庁が注意喚起を行っている。この商法が正常な事業活動と言えないものであることは明らかである。現行法上特商法に不十分ながら59条に規定があるが、同規定に基づくと消費者において一定の期間の保管が必要とされており、保管期間中に業者からの請求が継続してしまう等の問題点がある。そこで、特商法において、送り付け商法の禁止を明確にするべきである。その場合、この被害の実態に鑑み、事業者は送りつけた商品の返還や不当利得返還等の請求が一切できないことを明文化すべきである。

以上

 

2020年12月10日

神奈川県弁護士会

会長 剱持 京助

 

 
 
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